クテノポマ ネブロースム(Ctenopoma nebulosum)繁殖への取り組み※随時更新中

 2019年9月に入手したクテノポマ ネブロースム。私が確認した限りではこの時が本邦初輸入ではないかと思われる本種は、本邦における希少価値という点では最高クラスのクテノポマ属であると言える。 本種の最大の魅力はフィンスプレッディングの際に見られる黄色がかった発色だ。普段はほぼダークグレー一色であることが殆どであるのに対し、フィンスプレッディングの際には一瞬で体部全体が不均一に発色する。その姿はその学名が示す通り星雲の輝きを彷彿とさせる。 このネブロースムの輸入が今後も続くかどうかは全く不明であり、むしろその他のクテノポマ属の輸入の歴史を辿れば、輸入が途絶える可能性のほうが高いと思われる。そこで、この素晴らしい本種の魅力を今後も長く愉しむ為に、繁殖にチャレンジすることにした。【飼育環境】水   槽:90×30×36cm水槽照   明:コトブキ フラットLED900×1灯 ※水槽から1/3ずらして設置し、水槽全体の明るさに差ができるようにしているフィルター:テトラ ツインスーパーブリラントフィルター×1シェルター:塩ビ管、アヌビアス バルテリーえ   さ:ひかりクレスト ミニキャットコトブキ フライミックス(中粒)タンクメイト:ベトナムイエローフィンバンデッドローチ、サイアミーズフライングフォックス、タイガープレコ、フネアマガイ2021.12コトブキフラットLEDの故障、水温低下による...

クテノポマ ウィークシィ(Ctenopoma weeksii)の産卵・孵化に成功

2018年9月から始めたクテノポマ ウィークシィの繁殖への取り組みは、ついに産卵・孵化の成功まで至ることが出来た。以下にそこに至るまでの取り組みをまとめてみる。【飼育環境】水槽:90×30×36cm水槽照明:コトブキ社フラットLED900 1灯(10:00~23:00まで点灯)濾過:スポンジフィルター×3隠れ家:塩ビ管、アヌビアスバルテリー、人工水草餌:コトブキ社フライミックス(小粒~中粒)※2018年9月の飼育開始時よりフライミックス単食【~2020.12】 2018年の取り組み開始初期から2020年12月までは、ペアが揃っていて、健康に育てていればそのうち産卵するのではないかという安易な考えから、一般的に魚を性成熟させるのに重要と言われる日照時間を意識しつつ、クテノポマ属の棲息環境をイメージして、身近なもので代用しながらその環境を再現することに注力していた。 しかし、雌がふっくらした体型になり、抱卵していると思われながらも、全く産卵する気配がなかったことから、産卵のトリガーやそれまで許容範囲内にあると思っていた水質についても再考を余儀なくされる。【2021.1】 クテノポマ ウィークシィの好適pHについて、「FIsh Base」では6.2~7.2と示されているが、我が家で使用している水道水のpHは7.4前後であった。まずはこれを上記の範囲内に整え、それを常態とすることにした。そ...

クテノポマとは

   クテノポマは全ての種がアフリカの熱帯地域に生息し、特に西アフリカから中央アフリカの河川、湖沼等に生息している。その生物学的な分類は以下の通り。アナバス(キノボリウオ)目(Anabantiformes)アナバス亜目(Anabantoidei)アナバス科(Anabantidae)クテノポマ属(Ctenopoma)   クテノポマ属の仲間は現在11種が正式な学名として記載されている。それぞれ外観や性質が異なるが、基本的には派手さを持たない地味な熱帯魚だ。最大のもので、全長はおよそ25㎝、最小のもので10㎝程度の魚であり、特別広い環境でなくとも飼うことができる。同種同士、または姿形の似た種同士での小競り合いはたまに見られるが、それを除いた他種に対しては攻撃的な面を見せることはほとんどない。また、非常に頑健であり、適切な環境を維持していれば、病気への耐性も高いようだ。これらのことから、私の個人的な印象としては、非常に飼いやすい熱帯魚であると言える(と言っても、その他の熱帯魚の飼育経験はあまりないが…)。   ところで、「クテノポマ」って変な名前だとは思わないだろうか?私も初めて耳にした時はなかなか覚えることが出来なかった。この「クテノポマ」は和名がない為、日本国内で鑑賞魚として流通する場合にも、元々の学名をそのまま用いているの...

クテノポマムルティスピネ(Ctenopoma multispine)

【学名】Ctenopoma multispine 【命名者】Wilhelm Karl Hartwich Peters(1844)【体長】140mm(TL)【形態的特徴】   体高が比較的低く細長い体型の“shallow-body group”に属する。吻は丸く、全体的なシルエットはC.pellegriniに似る。腹鰭は短く排泄腔まで達しない。尾鰭の形状は丸みを帯びている。体の上部はオリーブグリーン、下部は白っぽくなる。躯幹部には不明瞭な黒い垂直の縦縞、または黒い斑点が見られる。背鰭の軟条部分にも黒っぽい斑点が見られる。   未成魚では尾柄部に黒斑が見られる。それは、上下に二つに分かれるような形をしており、背鰭軟条部の黒斑と合わせて、他の“shallow-body group”と区別するポイントとなる。【生息地】ザンベジ川、クワンザ川、オカバンゴ川及びオカバンゴデルタ、コンゴ盆地南部   C.multispinisはクテノポマ属の中で、最もアフリカ大陸の南部に分布する。【寿命】不明【好適環境】水温:24-27℃                    pH:6.0-7.5      &nb...

クテノポマ ムリエイ(Ctenopoma muriei)

【学名】Ctenopoma muriei【命名者】George Albert Boulenger(1906)【体長】100mm(TL)【形態的特徴】クテノポマ属の中では全長は最も小さい。体高は目立って高くないが、文献では“deep-body group”に含められている。吻は比較的丸みを帯びている。地色のオリーブ色に、多くの黒点が散りばめられている。尾鰭は丸く、尾柄部には黒い眼状斑があり、その周囲は黄色がかっている。体全体の鱗の棘は比較的強い。【生息地】チャド湖、ニジェール川盆地、ナイル川流域(ホワイトナイル)、ビクトリア湖、アルバート湖、コンゴ川上流、タンガニーカ湖【寿命】不明【好適環境】水温:23-28℃                    pH:6.0-7.5                    硬度:20dHまで【シノニム】Ctenopoma ctenotis(Boulenger,1919)Ctenopoma houyi(Ahl,1927)【その他】・C.murieiは植生が多く、比較的浅い水域(深さ15~30cm)に好んで生息している。それは、空中からの捕食者(例:ヒメヤ...

レオパード クテノポマ(Ctenopoma acutirostre クテノポマ アクティロストレ)

【学名】Ctenopoma acutirostre【命名者】Jacques Pellegrin(1899)【体長】150mm(TL)【形態的特徴】体高が比較的高い"deep-body group"に属する。クテノポマ属の中で最も鋭い吻を持つのが特徴的。淡褐色の地色に不規則な茶褐色の斑点が散りばめられており、これが"Leopard"の名前の由来になっている。尾柄部には黒斑が存在し、これは他の黒斑が目立たない個体でも比較的明瞭に残ることが多い。   レオパードクテノポマは、他のクテノポマに比べ、より待ち伏せ型の補食行動が強いと思われる。その為、クテノポマ属の中で最も前方に顎を突出させることが可能となっている。【生息地】コンゴ盆地中央部、ニジェールデルタ【寿命】不明【好適環境】水温:不明                    pH:6.0-8.0                    硬度:5-12dH【飼育雑感】クテノポマオケラータムと同様に隠蔽的性質が強く、活発に泳ぎ回ることは少ない。しかし、決して臆病ではなく、稀に同属に限らず、体格で勝る場合、他魚を追いかけ回すこと...

クテノポマ オケラートゥム(Ctenopoma ocellatum)

【学名】Ctenopoma ocellatum一般名:Eyespot ctenopoma【命名者】Jacques Pellegrin(1899)【体長】140mm(TL)【形態的特徴】クテノポマ属の中でも体高の高い「deep-body group」に属する。吻は比較的尖るが、その程度はレオパードクテノポマには劣る。尾柄部には明確な黒斑を持ち、その周囲は白っぽく縁取られており、所謂「目玉模様」の印象となることが多い。その黒斑の前方には不規則な横縞の列が存在する。この不規則な横縞は成長した個体ではそれほど明瞭ではなくなる可能性がある。顎は比較的大きく前方へ伸出するが、レオパードクテノポマのそれに比べると範囲は劣る。   カラーパターンとして、地色は茶褐色~黒褐色であり、腹側へ向かうにつれて色は薄くなる傾向がある。腹鰭と、背鰭・臀鰭・尾鰭も地色と同様の着色が見られるが、尾鰭の縁は透明になる。【生息地】主にコンゴ盆地。ナイジェリアのニジェールデルタからも報告されている。【寿命】不明【好適環境】水温:24-28℃                    pH:6.0-7.5              &nb...

クテノポマ ウィークシィ(Ctenopoma weeksii)

【学名】Ctenopoma weeksii【命名者】George Albert Boulenger(1896)【体長】120mm(TL)【形態的特徴】全体的なフォルムはCtenopoma maculatumと似ているが、サイズやカラーパターン、僅かな体型の違いにより区別が可能(※クテノポマ マクラータムの項目を参照)。カラーパターンは、淡褐色を基調とし、様々な色合いに変化を見せる。最も特徴的なのは、茶褐色と淡褐色が混ざったような複雑な斑模様が出現する時であり、この時、背鰭の基部から腹部にかけて、淡褐色のバンドが出現する。躯幹部中央の黒斑はこのバンドの中心部に位置する。【生息地】コンゴ盆地中央部(コンゴ川、Kasai川、sangha川)【寿命】不明【好適環境】水温:24~28℃                    pH:6.2~7.2                    硬度:4~15dH【飼育雑感】このクテノポマが我が家にやってきたのは、2018年9月のことだった。クテノポマに熱中し出してから3年余り、このクテノポマウィークシーの導入を心待ちにしてきたが、その間、輸入されたのはおそ...

クテノポマ マクラートゥム(Ctenopoma maculatum)

【学名】Ctenopoma maculatum【命名者】Alexandre Thominot(1886)【体長】150mm(SL)、200mm(TL)【形態的特徴】   全体的なフォルムはCtenopoma weeksiiと似ている。体高は高く、不対フィンは伸長しない。鰓蓋膜の縁は黒い。   頭部及び躯幹部のカラーはミディアムブラウンまたはグレー。未成魚の頭部及び躯幹部はdark brownを基調としており、それよりも明るい色彩の斑模様が入る。また、吻から目の付近を通り、鰓蓋のあたりまで、黒っぽいバンドが走り、顎の下には"dark bar"が見られる。   躯幹部中央にはどちらかと言えば垂直方向に長い"dark spot"がある。そのspotは、淡褐色のリングで囲まれているか、または、背鰭の基部から腹部にかけて伸びる明るい淡褐色のバンドの中に位置している。   未成魚の腹鰭の基部に近い部分は黒く着色されているが、成魚の腹鰭は着色されていない。尾鰭の縁には放射状に黒い筋が見られる。   全体的に茶を基調としたカラーパターンを示すが、その茶色は様々な色合いへと変化に富む。   C.weeksiiとC.maculatumと違いは以下の通り。1.最大サイズはC.macul...

クテノポマ ネブロースム(Ctenopoma nebulosum)

【学名】Ctenopoma nebulosum【命名者】Steven Mark Norris & Guy G.Teugele(1990)【体長】96.5mm(SL)【形態的特徴】    本種は、未成魚のクテノポマキングスレイと形態的特徴が似ているが、本種の成魚はその独特のカラーパターンにより、キングスレイとは明らかに異なる印象を見せる。"dark chocolate brown"の地色に、体側面及び頭部は"light brown"の斑模様が散りばめられるのだ。その他のカラーパターンは以下の通り。①背鰭・臀鰭・尾鰭にまで地色は及ぶが、鰭先部分は通常透明となる、②腹鰭は暗く着色する、③腹及び喉は薄い茶色で、暗色の斑模様、または、いくつかの不規則な"dark bar"が見られる、④吻の下側には黒褐色の線が入る   本種のラビリンス器官は、他のクテノポマ属に比べて、そのサイズ及び複雑性が低減されている。それは、この種が溶存酸素濃度の比較的高い流水域に棲息することに起因しているらしい。【生息地】ナイジェリア南東部のSombreiro川及びImo川(ニジェールデルタ)   本種は幅およそ10m、水深1~2mの流水域からのみ発見されており、沼地や停滞した水域には生息していない。また、季節的に氾濫してできる氾濫原の水路からも見つか...

クテノポマ ペレグリニ(Ctenopoma pellegrini)

【学名】Ctenopoma pellegrini一般名:Pellegrins Buschfisch【命名者】George Albert Boulenger(1902)【体長】112mm(TL)【形態的特徴】C.multispineやC.nigropannosumと似た体高の低い細長い紡錘型の体型をしている。その体型はC.nigropannosumと比較すると、より円筒形に近く、吻は比較的丸みを帯びている。成魚には尾柄部に輪郭の不明瞭な横長の"dark bar"が見られる。成魚では、このbarは胸鰭付近まで達するが、未成魚の場合はより"spot"に近い。その他、鰭条数や鰓蓋の蓋の棘数等の値はC.nigropannosumと重なっている。   また、幼魚(5~6cm)では、相対的に頭部が大きく丸みを帯びる為、頭でっかちなシルエットとなる。【生息地】コンゴ川流域(C.nigropannosumと分布が似るが、やや限定的)【好適環境】水温:22~27℃ pH:不明硬度:不明※7~9月頃の間、29~30℃で飼育しても全く問題はなかった。【飼育雑感】C.pellegriniが我が家にやってきたのは、平成30年4月のことだった。私がクテノポマを飼育し始めた2015年頃は、その名前すら全く知らなかったが、私がクテノポマ飼育の師と仰ぐ人物から、その名前を初めて聞かされ、...