クテノポマムルティスピネ(Ctenopoma multispine)

【学名】Ctenopoma multispine 

【命名者】Wilhelm Karl Hartwich Peters
(1844)

【体長】140mm(TL)

【形態的特徴】
   体高が比較的低く細長い体型の“shallow-body group”に属する。吻は丸く、全体的なシルエットはC.pellegriniに似る。腹鰭は短く排泄腔まで達しない。尾鰭の形状は丸みを帯びている。体の上部はオリーブグリーン、下部は白っぽくなる。躯幹部には不明瞭な黒い垂直の縦縞、または黒い斑点が見られる。背鰭の軟条部分にも黒っぽい斑点が見られる。
   未成魚では尾柄部に黒斑が見られる。それは、上下に二つに分かれるような形をしており、背鰭軟条部の黒斑と合わせて、他の“shallow-body group”と区別するポイントとなる。

【生息地】ザンベジ川、クワンザ川、オカバンゴ川及びオカバンゴデルタ、コンゴ盆地南部
   C.multispinisはクテノポマ属の中で、最もアフリカ大陸の南部に分布する。

【寿命】不明

【好適環境】水温:24-27℃
                    pH:6.0-7.5
                    硬度:5-20

【シノニム】
Ctenopoma machadoi(Fowler,1930)
Anabas rhodesianus(Gilchrist & Thompson,1917)

【その他】
・種小名の“multispine”は「棘が多い」という意味がある。この種は同属の“shallow-body group”であるCtenopoma nigropannosumやC.pellegriniと比較すると、主・間・下鰓蓋骨の棘が平均値において、2~10本多いという特徴を持つが、この種が発見されたのが、クテノポマ属で最も早く、当時、同属内に比較対象がなかったことを考えると、この種小名は、「クテノポマ属」自体の、鰓蓋・鱗に棘があるという特徴を端的に表現したものであると考えられる。

・C.multispineはクテノポマ属で唯一、カラハリ砂漠のオカバンゴデルタに分布する。季節によって大きく面積を変える水域に対応する為、C.multispinisは陸上移動を行う。その際には、体を完全に横倒しにした状態で、鰓蓋を大きく開き、それを地面に引っ掻けるように土台とする。そして、体を大きくくねらせ、尾柄部を地面に叩きつけるようにしながら前進するという。

・シノニム“A.rhodesianus”は「ローデシアのアナバス」という意味。ローデシアは現在のザンビアとジンバブエを含む地方のこと。タイプロカリティはローデシアのリビングストン。このリビングストンは、ヨーロッパ人として初めてアフリカ大陸を横断(南大西洋~インド洋までの内陸部)したスコットランドの探検家であり宣教師David Livingstoneに由来する地名。このA.rhodesianusを命名したのは、C.kingsleyaeとC.pethericiを命名したドイツの動物学者A.Günther。

【参考】
1.J.-P Gosse 1986.Anabantidae.CHECK-LIST OF THE FRESHWATER-FISHES OF AFRICA,ISNB MRAC ORSTOM Paris,P 402-403,408
2.Steven Mark Norris.1982.Superspecific relationship within the genus Ctenopoma(perciformes,Anabantoidei)a morphometric analysis and preliminary phylogeny.P23-26,91-93
3.George Albert Boulenger.1909. Catalogue of the fresh-water fishes of Africa in the British Museum,British Museum (Natural History). Dept. of Zoology.P53-54
4. WIKIPEDIA「オカバンゴデルタ」、「オカバンゴ川」
5. Fish Base 「Ctenopoma multispine」

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クテノポマ専科

~更新情報~ 2022年1月31日「Ctenopoma動画保管庫」更新 アフリカ大陸の熱帯地域に生息するラビリンスフィッシュの仲間「クテノポマ」。私が魅了された野性味溢れるその姿と生態を、飼育下での観察と文献等から読み解き、紹介していきたい。