クテノポマ オケラートゥム(Ctenopoma ocellatum)

【学名】Ctenopoma ocellatum
一般名:Eyespot ctenopoma

【命名者】Jacques Pellegrin(1899)

【体長】140mm(TL)

【形態的特徴】クテノポマ属の中でも体高の高い「deep-body group」に属する。吻は比較的尖るが、その程度はレオパードクテノポマには劣る。尾柄部には明確な黒斑を持ち、その周囲は白っぽく縁取られており、所謂「目玉模様」の印象となることが多い。その黒斑の前方には不規則な横縞の列が存在する。この不規則な横縞は成長した個体ではそれほど明瞭ではなくなる可能性がある。顎は比較的大きく前方へ伸出するが、レオパードクテノポマのそれに比べると範囲は劣る。
   カラーパターンとして、地色は茶褐色~黒褐色であり、腹側へ向かうにつれて色は薄くなる傾向がある。腹鰭と、背鰭・臀鰭・尾鰭も地色と同様の着色が見られるが、尾鰭の縁は透明になる。

【生息地】主にコンゴ盆地。ナイジェリアのニジェールデルタからも報告されている。

【寿命】不明

【好適環境】水温:24-28℃
                    pH:6.0-7.5
                    硬度:3-12

【飼育雑感】クテノポマオケラータムは水槽内を活発に泳ぎ回ることはあまりなく、レオパードクテノポマに近い隠蔽的性質が強いようだ。他種にはほとんど関心を示さず、たまに同種を追いかけ回している姿を見かける程度。それほど執拗に攻撃を加えることはない。人工飼料にも問題なく餌付き、給餌の時には隠れている流木の陰等から勢いよく前に出てくる。

【シノニム】なし

【その他】
・学名の"ocellatum"は「蛇の目模様の」、「単眼を持つ様」の意。尾柄部の眼状斑を指す。一般名も同様の意味。

・C.ocellatumはかつて“Zulu perch”と呼ばれていた。これは、南アフリカ共和国とジンバブエに居住している民族であり、その歴史的経緯から“戦闘民族”とも呼ばれるズールー族が愛用していた大盾(Nguni shield)に姿形を見立てられたことによるもの。ところが、C.ocellatumはズールー族が居住するアフリカ南部には分布していない。それにも関わらず、この名前で呼ばれるようになったのには、C.ocellatumが新種として発見された1800年代後期のヨーロッパは、ズールー戦争(イギリス対ズールー族との戦争。火器を主力とするイギリス軍が、槍と大盾を主力とするズールー族に、一時的ではあるものの大敗を喫した。)の余韻が色濃く残っている時代であり、当時の愛好家たちは、新種としてアフリカからやってきた珍しい標本に対して、生物地理学を重視することが出来なかったという背景があったようだ。とは言え、学名の命名者であるフランスの国際自然史博物館の研究者であったJacques Pellegrinは、当然の如く、この種の形態的特徴を適切に捉えた命名を行っている。

・クテノポマオケラータムは1899年に新種として記載されてから100年以上、コンゴ川流域、特に“cuvette centrale”と呼ばれるコンゴ盆地の中央地帯にその分布が限られるとされてきた。しかし、2003年、Norrisにより、ナイジェリアのニジェールデルタ地帯からもその分布が報告されている。我が家にも、2016年に輸入されたナイジェリア産のオケラータム(というインボイスで入荷したと思われる個体)がいるが、おおよその形態的特徴はコンゴ産の個体と似るものの、細かな点ではかなり異なる。その後、私が確認している限りでは、ナイジェリア産のオケラータムは国内に輸入されていない。

【参考】
1.J.-P Gosse 1986.Anabantidae.CHECK-LIST OF THE FRESHWATER-FISHES OF AFRICA,ISNB MRAC ORSTOM Paris,P 411-412
2.George Albert Boulenger.1909. Catalogue of the fresh-water fishes of Africa in the British Museum,British Museum (Natural History). Dept. of Zoology.P67-68
3. Steven Mark Norris.1982.Superspecific relationship within the genus Ctenopoma(perciformes,Anabantoidei)a morphometric analysis and preliminary phylogeny.P37-42,97
4. Fish Base 「Ctenopoma ocellatum」

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クテノポマ専科

~更新情報~ 2022年1月31日「Ctenopoma動画保管庫」更新 アフリカ大陸の熱帯地域に生息するラビリンスフィッシュの仲間「クテノポマ」。私が魅了された野性味溢れるその姿と生態を、飼育下での観察と文献等から読み解き、紹介していきたい。