クテノポマ アッシュビースミス(Ctenopoma ashbysmithi)

【学名】Ctenopoma ashbysmithi
【命名者】Keith E.Banister and Roland G.Bailey(1979)

【体長】3.9cm(SL) ※SL→Standard Length(吻端から椎骨の後端まで)

【形態的特徴】体高は高くなく、ミクロクテノポマ属やクテノポマニグロパンノースム、クテノポマペレグリニィに似た細身の紡錘型をしている。尾柄部にはクテノポマペレグリニィに似たdark barを持つ。その前方から躯幹部へ向けて13~15本の鎖状の垂直のラインがある。対になっているヒレは着色はなく、その他のヒレはミッドブラウン。頭部~躯幹部背側のカラーパターンはミディアムブラウン~ダークブラウン、腹側はブラウン~ochre(黄土色)。全体的にブロンズ色の光沢を持つとされる。

【生息地】コンゴ川に面した港湾都市Kindu(コンゴ民主共和国)から南西に10km程離れた名もない沼地

【寿命】不明

【好適環境】不明

【その他】恐らく、この種はクテノポマ属の中で最小の種であると思われる。そして、日本国内には輸入されたことはないようだ。ナイジェリアの南西部地域を除いては、この種が確認されていないと言われ、通常の流通ルートではやってこない地域に生息しているのかもしれない。また、この種には、他種のdwarfism(矮小体躯症)ではないかという議論もあるようであり、そう考えると、上述の形態的に似た別種の若魚として、国内に輸入されることが過去にはあったのではないか、また、これからもそういった可能性があるのではないかと期待してしまう。

ところで、この「ashbysmithi」という学名が何に由来するのか、調べるのには苦労した。その答えは、この種が新種として発表された論文の中にあった。この論文は、1年間に渡りコンゴ川(論文発表時はザイール川)で行われたある魚類調査が元となったもの。その調査のサポートの為、尽力したのが、当時の英国軍中尉のAdrian Ashby Smithという人物だった。この人物は調査が終了した翌年、エクアドルの火山探索活動中に命を落とした。論文の著者であり、この種の命名者であるKeith E. BanisterとRoland G. Baileyは、彼への感謝と哀悼の意を込めて、この種の名付けをしたのかもしれない。

【2018年11月11日追記】
1982年にNorrisは自身が発表した論文の中で、Ctenopoma ashbysmithiはC.nigropannosumやC.pellegriniの幼魚と比較して、これが独立種であると判断するだけの材料が不足していると述べている。原記載論文で述べられたC.Ashbysmithiの特徴は、全てが個体の発達段階の特徴に強く影響されていると言うのだ。これに従って、ここではC.ashbysmithiを形態的特徴の似たCtenopoma属の幼魚である可能性があるとして、暫定的に、分類上の正式な学名ではないと判断する。

【参考】
1.Keith E.Banister and Roland G.Banister 1979.Fishes collected by the Zaire River Expedition,1974-75.  Zoological Journal of Linnean Society,66:205-249.
2.Steven Mark Norris 1982.Superspcific relationship within the genus Ctenopoma(perciformes,anabantoidei) A morphometric analysis and preliminary phylogeny,P31-32



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クテノポマ専科

~更新情報~ 2022年1月31日「Ctenopoma動画保管庫」更新 アフリカ大陸の熱帯地域に生息するラビリンスフィッシュの仲間「クテノポマ」。私が魅了された野性味溢れるその姿と生態を、飼育下での観察と文献等から読み解き、紹介していきたい。