クテノポマ ウィークシィ繁殖への試み

【2018.11.26】→【2019.6.9飼育環境更新】→【2019.9.7飼育環境更新】→【2019.11.28飼育環境更新】→以降の更新は最下段へ↓
2018年9月3日に念願のクテノポマウィークシー6匹を入手し、その内の5匹を使って繁殖へ向けての取り組みを行った。その後、2019年6月に8匹のウィークシィを追加。以下の2つの水槽に3匹ずつ入れて繁殖を目指している。

現在の飼育環境は以下の通り。
①45×24×30cm水槽
生体:クテノポマウィークシィ ♂♂♀の3匹(6~8cmサイズ)
濾過:底面フィルター+スポンジフィルター×2
水草:アマゾンフロッグピット
照明:コトブキフラットLED
餌:コトブキ フライミックス(1回/日)
pH:約6.0
水温:秋期~冬期 23~26℃
春期~夏期 23~29℃

②60×30×36cm水槽
生体:クテノポマウィークシィ ♀♀♂の3匹(8~9cmサイズ)
濾過:スポンジフィルター×2
水草:アマゾンフロッグピット
照明:コトブキフラットLED
餌:コトブキ フライミックス(1回/日)
pH:約6.0
水温:①と同じ

   導入当初は①にウィークシーを4匹入れていたが、徐々に争いが頻繁に起こるようになり、体格で劣りプレッシャーを受けていた3匹が餌の時に前に出てこなくなった。その為、最も強かった個体を②へ移し、元々メイン水槽で飼育しており、体格が大きく、比較的スレンダーな体型をしている個体を②へ移動させた。
   ②の水槽はそこで安定したが、今度は①に残された3匹の間で優劣関係が生まれてしまった。そこで、現在は、①に残された3匹のうちで最も強い個体を②へ移し、念のため、その個体のみセパレーターで隔離している。この段階で①の水槽は安定した。
   クテノポマ属は外見では殆ど雌雄の判別ができない為、何となく体型がふっくらしている個体と、スレンダーな個体を組み合わせ、争いが激化しないかどうかで仮のペアを形成している。

↑①水槽 立ち上げ初期
↑①水槽 2019.11現在

↑②水槽 立ち上げ初期
↑②水槽 2019.11現在

【2018.12.4】
記録をつける便宜上、各個体に以下のような名称をつける。

・個体A
   ②水槽(60cm水槽)で最も強い個体。体格は個体Bと並んで最も大きい。個体Bの躯幹部中央の黒斑をつつくことが多いが、それほど執拗に狙うことはない。2018年12月9日現在、個体Bと一緒に②水槽をセパレーターで仕切った2/3分のエリアで飼育している。斑模様を出現させることは殆どない。

・個体B
   ②水槽で個体Aと一緒に飼育している。体格は個体Aと並んで最も大きい。腹部が大きく丸みを帯びている。個体Aに躯幹部中央の黒斑をつつかれることが多いが、激しく逃げ回ることや、攻撃し返すことは全くない。個体Aと一緒にしたばかりの頃は常に強い斑模様を出していたが、現在はあまり見せなくなってきている。
   ①水槽(45㎝水槽)で個体C・D・Eと一緒にしていた時には、他個体を激しく追い回し、他個体にストレスを与えていた程、気性が荒かった。

・個体C
   個体Bがいなくなった①水槽で最も強い立場を獲得し、個体D・Eを追いかけ回すようになった個体。この時は斑模様を出していなかったが、②水槽に移してからは常に斑模様を出している。体格は個体A・Bより僅かに劣る。体型はやや丸みを帯びる。
   2018年12月9日現在、②水槽をセパレーターで仕切った1/3分のエリアで単独飼育している。

・個体D
   ①水槽で個体Eと一緒に飼育している個体。体格は個体Eと同程度であり、最も小さい。個体Eと異なり、かなり体高が高い。一緒に飼育している個体に関わらず、殆ど常に斑模様を強く出している。個体Eに時々つつかれているが、パワーバランスは殆ど均衡している。

・個体E
   ①水槽で個体Dと一緒に飼育している。体格は個体Dと同程度であり、最も小さい。個体Dと異なり、体高は低く、かなり細長い体型をしている。一緒に飼育している個体に関わらず、斑模様を出すことは殆どない。個体Dを時々つつくが、パワーバランスは概ね均衡している。

【2018.12.9】
   寒さが本格的になってくると同時に、それまで24度をキープしていた水温が21度まで下がってしまった。それによる各個体への影響は全く感じられない。しばらくこのまま様子を見ることとする。

【2018.12.17】
②水槽の個体AがBを激しく牽制し始めたことにより、2日前からBが物陰に隠れたまま出てこなくなった。そのため、急遽水槽30cm水槽(水槽③)を立ち上げ、そこへ個体Aを移すことにした。すると、個体Aがいなくなって間もなく、個体Bは活気を取り戻し、餌も取るようになった。クテノポマウィークシーは比較的温和とされるが、2匹での飼育でも、それ以上の数での飼育であっても、個体同士の優劣により、やられる側は引きこもりがちになりやすいようだ。今回やられる側であった個体Bは、以前は個体C・D・Eとの間で頂点に立つ存在であった。また、個体Cも同様に個体D・Eに対しては攻撃する側に回る立場であった。これで、今のところ争いが起こらないのは個体D・Eの間だけとなった。

【2018.12.19】
Michael Muller氏の著より、Ctenopoma weeksiiの繁殖に関して以下の知見が得られた。
・体長5㎝での導入からおよそ1年後に繁殖可能となった
・♀の体型は雄より丸く太って見える。雄の目の後ろ(いずれかの鰓蓋のことか)と尾の付け根(側線後端の側線鱗のことか)に棘が見られる。
・水質は17~24GH,7~12KH,pH7~8、水温は21~25℃。水温24℃の時、最も産卵がよく見られた。
・1/3強の飼育水が3週間毎に交換された。換水後、水温は一時的に12~16℃まで低下した。これによりC.weeksiiは活気づいているように見えた。
・繁殖行動が見られたペアは植生の多い別のタンクへ移され、早くて翌日、遅くて3ヶ月後に産卵が見られた。
・卵の保護の為、抗生物質を使用した。

また、野村(1964)によれば、魚の成熟・産卵に影響を及ぼす外部環境要因としては、光と温度の他に、水流、水位、底質、水質、及び魚同士が与え合う刺激が関与しているという。

以上のことから、Ctenopoma weeksiiの生息環境を考慮し、以下に挙げる環境下で繁殖行動が見られるかどうかを観察していきたい。

1.1日16時間の光照射

2.多くの浮遊植物の提供

3.ペアは闘争による疲弊と、相互の刺激、管理のし易さを考慮して、セパレーターで分けた状態を基本とする

4.ペアを同居させる前に水位を1/2に減らし、セパレーターを撤去する。その翌日、新しい水を通常水位より多く提供する。

5.水温:22~23℃に保つ
気温:25~26℃に保つ(空気呼吸を行う為)
pH:6.2~6.4を目安とする
硬度:考慮しない

6.ペアリングを試みる直前まで、餌は多めに  毎日与える

尚、12月19日現在、雌と思われる個体は腹部が下方及び側方へ膨らんでおり、成熟しているものと仮定する。

【2018.12.20】
セパレーターを購入し、一時的に隔離していた個体Aを水槽②に戻した。環境的にはかなり狭いが、②水槽を3つに分け、♀1、♂2と思われる3匹で繁殖への試みを実践していく。

【2018.12.24】
・隔離していた個体Aは水合わせのミスにより落としてしまった。
・個体BとCはセパレーター越しに接近し合う様子が見られた為、繁殖への試みの第一段階として、24日夜に水位を1/2まで減らしてみることにした。この時点ではまだセパレーターは撤去していない。この②水槽のpHは直近の測定では7.0~7.4と目標よりやや高値だった。   

【2018.12.26】
12月25日夜、水位を元の水量より多めに戻した。12月26日朝までの間に、2匹は付かず離れずの位置を保つように泳いだり、雌が雄の体側面を軽くつつくような様子を見せたりしている。

【2018.12.28】
12月28日の夕方までの間に、明確な繁殖行動が見られず、雄と思われる個体が雌からのプレッシャーでストレスを感じている様子が見られた。そのため、28日から再び雄雌をセパレーターで分けることとした。

【2019.2.18】
前回記録した時点から、再度上記と同様の試みを行ったが、やはり繁殖行動が見られず、オスと思われる個体がメスからのプレッシャーで萎縮してしまっている様子であった。

そこで、海外の文献に習い、上記の繁殖への試みを一部変更し、換水時の水温変化を行うこととした。換水時に水温調整のしていない冷水を注ぎ、水温を低下させる。その際、極端な環境変化を避ける為、換水量は1/3、水は極少量ずつ注入し、およそ30分かけて水温を24℃から21℃まで下げた。そして、新しい水を注いでる間にセパレーターを外し、ペアを一緒にした。

この試みの直後にペアがこれまでに見せたことのない動きを見せる。双方、お互いを意識しているようにゆっくりと近づいていき、オスは時折、体を痙攣させるように震わせた。メスはオスの近くを離れず、接近すると体を大きく波打つように震わせた。これに対し、オスもメスと同様の波打つような動きを時折見せた。この付かず離れずのやり取りは何度か繰り返えされ、その間、お互いに攻撃的な様子は見られなかった。これまでと最も違ったのは、常に攻撃的だったメスが一切オスを攻撃しなかったことだ。ペア同居後1時間経過しても、上記の行動を続けていた為、同居させたまましばらく経過を見ることにした。

ペア同居から約2時間後、徐々にオスがメスを避けるようになる。まだ産卵までには至らないか。

【2019.2.19】
ペア同居からおよそ24時間後、オスが水槽の隅で横たわっているのを発見。明らかにメスに対して萎縮してしまっていると思われた為、急いでセパレーターを再設置する。すると、すぐにオスは何事もなかったように泳ぎ始めた。

今回も産卵まではいかなかったが、昨日の様子から、少なくともこの二匹はペアであることが確認出来た。そして、前回見られなかった繁殖行動ともとれるお互いの干渉が確認できただけでも一歩前進か。次回は、今回のような手続きで再度ペアを一緒にし、オスがメスを避けるようになった段階で、ペアを分けるよう注意が必要であると思われる。

【2019.2.20】
メスからのプレッシャーを受けていたオスは、今日になり、いつも通りの調子に戻った。今回の試みにより、繁殖の引き金としては、水位や水質の変化より、水温の変化が関わっているのではないかと考えられた。また、今回、水温は1時間未満の短時間で3度下がり、その後緩やかに25度まで上昇した。この程度の変化では、個体に悪影響はなさそうであった。この変化の幅を今後は徐々に広げてみよう。

【2019年3月16日】
   2月18日以降、ほぼ同様の条件で2回ペアリングを試みた。  
   1回目は、2月18日同様に雌雄で互いを意識した接近が見られたものの、数時間後にはオスが攻撃を受け始めた為、その段階で雌雄を分けた。
   2回目は3月16日。これまでとほぼ同様の状況となったが、これまでと違い、ペアを一緒にしてから8時間ほど経過しても、メスがオスを攻撃し始める様子がない。このまま、雌雄を分けることなく、一晩様子を見てみたいと思う。

【2019年3月19日】
3月16日にペアのセパレーターを外し、一緒にしてから、前回のように雄が雌のプレッシャーで極度のストレスを感じている様子が見られなかった為、現在もペアを一緒にしたままで様子を見ている。

雄は普段は物陰に隠れているものの、餌の時間になると前に出てきて、しっかりと餌を食べている。雌は時々雄の体側面をつつくが、執拗に追い回すような様子は見られない。

【2019年3月29日】
   3月16日から継続してペアを同居させている。普段、雄はスポンジフィルターの影に身を隠してじっとしているが、毎日ではないものの餌は食べている。
   この日、16日以来初の足し水を行うと、雄は背鰭を震わせて落ち着きなくフィルターの影から出てきた。それに呼応するように雌も雄の体側面を突つきつつ雄に近より、体を左右に振るような行動を見せた。しかし、雌からのプレッシャー(体側面の突き)が強く、雄はすぐにフィルターの影に戻ってしまった。
   足し水(わずか0.5㍑程度)のみで雄の行動に変化が見られた。繁殖行動のキーと思われた水温低下は必須ではないのかもしれない。

【2019年6月5日】
その後もセパレーターを使わず、ペアを常に同居させたまま飼育を継続しているが、繁殖の兆しは見られない。そこで、本日あらたにクテノポマウィークシィ8匹を迎え、その中でも大型の個体2匹を水槽①と②に一匹ずつ加えた。元々いるペアの片方または双方が成熟していない可能性も考えられる為だ。

【2019年6月9日】
新しく導入した個体を加え、①水槽は雄1、雌2、②水槽は雌1の雄2となったようだ。
新しく迎えた個体たちも、3日目には餌を問題なく摂り始めた。先住の個体たちに虐められる様子もなく、順調に環境に馴染んでいけそう。

【2019年8月31日】
新しく加えた個体たちもすっかり水槽に馴染み、さらにそれぞれサイズアップしてきた。しかし、これまで目立った争いがなかったところに、ここ数日水温が下がりだしてきたタイミングで②水槽の雄同士の争いが目立ってきた。そこで、②水槽をセパレーターで仕切り、ペアと雄一匹を分けてみることにした。

【2019年9月1日】
水槽①、②いずれも水温の変化を与えても、明確な変化が見られなかった為、本日より照明点灯時間を1日16時間から13時間に変化させてみる。これでも変化が見られなければ、また一定期間経過後に照明点灯時間を減らしてみよう。
  参考データ:
・コンゴ川下流ブラザヴィルの平均気温が他月より2~3度低下する期間(6~8月)の日照時間は、他月よりおよそ2時間少ない(6時間→4時間)
・コンゴ川の水量は年間を通しておよそ一定
・現在の水槽①②の水温はおよそ25度前後(一時的な低気温による)
今後の計画:
この後、何も変化がなければ、水温が更に低下する秋期に照明時間を13→10時間へ変更してみる。水温は下限22度まで下げ、3ヶ月経過後徐々に24~25度まで上昇させる。それに合わせて照明時間も10→13まで戻す。 

【2019年9月7日】
②水槽のセパレーターで単独飼育とした雄と、①水槽の雌一匹とを、別水槽(30cm)水槽にてペア飼育してみることとする。
それぞれが成長してきており、雄雌の判別はおそらく間違いない。
これでそれぞれがペア飼育となる。新しいペア水槽は水槽③とする。

【2019年9月15日】
新しいペアの③水槽を立ち上げてから6日目にして、やっと2匹それぞれの捕食を確認できた。水槽内を弄られるストレスによる一時的な拒食はだいたいいつも起こる。殆どの場合、放っておけばまた食べ出すが、最も改善が早いのは、ソイルを敷き、最も水草が繁茂している①水槽のようだ。やはり身を隠す場所が多いほうがストレスの軽減になるのだろう。

【2019年11月28日】
③水槽は立ち上げ後、一時期は順調に経過していたものの、やはり環境が狭すぎるせいか、他の2つの水槽に比べ、小競り合いによると思われる拒食が多く認められた。その為、③水槽での繁殖は難しいと考え、このペアを①と②水槽へ振り分けることとした。

①水槽は♂♂♀、②水槽は♀♀♂の3匹ずつとなった。

【2019年12月1日】
①水槽でウィークシィと同居させていたパンダガラが調子を崩した。原因として考えられるのは、11月28日に行った環境変更の際に、スーパーピートを追加したことくらいか。いずれにしても、底面ろ過稼働から一年以上低下しており、その弊害も予想された為、思いきって①水槽のウィークシィ3匹も②水槽にまとめてしまうことにした。また、その際に②水槽で稼働させていた簡易式底面ろ過も上述の理由から撤去した。

【2019年12月7日】
②水槽にまとめたクテノポマウィークシィ6匹は思いの外上手くやっている。①水槽で維持していたアヌビアス バルテリーを②水槽へ移動する。
↓12月7日現在の②水槽
【2019年12月10日】
クテノポマ ウィークシィの繁殖に成功したという海外の報告を見ると、450㍑水槽というかなり大きな水槽にウィークシィを複数匹入れていたという。6匹を同じ水槽で管理する以上、少しでも大きな水槽のほうが良いだろうと考え、思いきって90×30×36cmへサイズアップすることにした。

新環境は以下のとおり。
水槽:コトブキ 90×30×36cm水槽
照明:コトブキ フラットLED900
底床:なし
ろ過:テトラ ブリラントフィルター(スポンジフィルター)×4 ※シェルターも兼ねる
水草:アマゾンブロックピット、アヌビアス バルテリー
その他:
・ろ材バックに「スーパーピート」を入れ、pHを6.4~6.6程に下降させている
・念のため隔離ボックスを常設
↓2019.12.10現在の繁殖用水槽
↓2020.1.13現在の繁殖用水槽
アマゾンフロッグピットが繁茂し過ぎてメンテナンスや給餌がし難くなっていた上に、全体的に薄暗くなり過ぎていた為、水面のみのセパレーターにより、明るく開けたエリアと、水草が繁茂した入り組んだエリアを作る。
↓水槽上部から(開けたエリア)
↓水槽上部から(水草エリア)

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クテノポマ専科

~更新情報~ 2022年1月31日「Ctenopoma動画保管庫」更新 アフリカ大陸の熱帯地域に生息するラビリンスフィッシュの仲間「クテノポマ」。私が魅了された野性味溢れるその姿と生態を、飼育下での観察と文献等から読み解き、紹介していきたい。