クテノポマ キングスレイ(Ctenopoma kingsleyae)

【学名】Ctenopoma kingsleyae 
 一般名:Tailspot ctenopoma,Silverbelly ctenopoma

【命名者】Albert Günther(1896)

【体長】18.24cm(SL) 
              24.5cm(TL→Total Length全長)

【形態的特徴】他のクテノポマに比較的良く見られる吻の尖りは鈍く、やや丸みを帯びる。カラーパターンとしては、頭部~尾部、各鰭にかけて全体的にmedium greyまたはbrownを示すが、腹部は銀色を呈する。尻鰭の先端は白い着色が見られる。通常、対になっている鰭(胸鰭、腹鰭)は色素沈着していない。しかし、特にコンゴ川流域に棲む個体では、腹鰭のleading edge(最も太い鰭条側)側が僅かに褐色に着色することがある。また、尾柄部にはひとつの黒斑を持つが、SL20mm以下の幼魚においては、同箇所に目玉模様を持つとされる。これが成長に伴い、輪郭のはっきりしない黒斑へと変容していくものと思われる。キングスレイの背鰭・尻鰭の軟条の後端部分と、尾鰭は尾側へ向けて太く伸長する傾向があり、これは体高の低いクテノポマ属の仲間に見られる特徴と似ている。キングスレイの幼魚は、幾つかの小さな斑点を持ち(主に頭部か)、体高は低く細長い体型をしている。クテノポマ属の仲間はレオパードクテノポマやオケラータムのように体高が高いタイプと、ペレグリニィやニグロパンノースムのように体高の低いタイプに分けられるが、キングスレイはその中間タイプのように思われる。

【生息地】セネガル川・ヴォルタ川・ニジェール川・コンゴ川流域、モーリタニア

【寿命】30年以上とも言われる

【好適環境】水温:22-28℃
                    pH:6.0-8.0
                    硬度:5-19dH

【飼育雑感】私は2015年8月、3匹のナイジェリア産クテノポマキングスレイの幼魚(全長7㎝程)を迎えた。導入当日から餌を食べる程物怖じしない性格であり、これまで飼育してきて苦労させられた記憶が全くない。飼育開始から2年以上は亀(サルヴィンオオニオイガメ)と混泳させており、常に捕食の危険性があったが、それをストレスに感じている様子も見られなかった。成長は非常に早く、あっという間に全長15㎝程度までは成長したように思う。同種同士で僅かに争うことはあるが、他種に対しては全くと言って良い程、攻撃的な面を見せない。現在は全長20㎝弱にまで達していると思われ、我が家のラビリンスフィッシュ混泳水槽では、最大級の体格を誇っている。

【シノニム】
Ctenopoma argentoventer(Ahl,1922)
Ctenopoma breviventrale (Pellegrin,1938)
Anabas africanus(Vetterlein, 1914)

【その他】
・クテノポマキングスレイの学名「kingsleyae」はイギリスの探検家Mary Henrietta Kingsleyに献名されたもの。Kingsleyは当時のイギリスの女性として非常に珍しかった単独での西アフリカ地域の探検を成し遂げた。命名者のGüntherとは、探検中一時帰国した1893年に関わったとされる。彼女のアフリカの旅はキングスレイが新種として記載された論文がGüntherによって発表された年の一年前にあたる1895年に終わった。その後、Kingsleyは1897年に自身のアフリカでの旅を綴った「Travels in West Africa」という著書を残している。

・シノニムであるCtenopoma breviventraleの“breviventralis”は「短い腹」の意。“ventral”がそのまま「腹」の意味なのかどうかは不明だが、Ctenopoma属は一般的にMicroctenopoma属と比べ、腹鰭が短い(Analまで達しない)という特徴を持つ。

・シノニムであるCtenopoma argentoventerの“argentoventer”は「銀の腹」の意。C.kingsleyaeの光沢を持つ銀色がかった腹部を指すと思われる。一般名“Silverbelly”も同じく「銀の腹」の意。

・産卵数は513~4680個。

・シノニム、Anabas africanus(Vetterlein, 1914)の名は、キングスレイの分布域の広さに由来すると思われる。

【参考】
1.J.-P Gosse 1986.Anabantidae.CHECK-LIST OF THE FRESHWATER-FISHES OF AFRICA,ISNB MRAC ORSTOM Paris,P 407-408
2.Melanie L. J. Stiassny, Guy G. Teugels, Carl D. Hopkins 2007.THE FRESH AND BRACKISH WATER FISHES OF LOWER GUINEA,WEST-CENTRAL AFRICA,Institut de recherche pour le développement,P263-264
3.  WIKIPEDIA「Mary Kingsley」
4.  Fish Base 「Ctenopoma kingsleyae」
5.I.P.Oboh,U.C.Olowo 2017,REPRODUCTIVE BIOLOGY OF CTENOPOMA KINGSLEYAE(PISCES:ANABANTIDAE),FROM RIVER SILUKO,EDO STATE,NIGERIA 

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クテノポマ専科

~更新情報~ 2022年1月31日「Ctenopoma動画保管庫」更新 アフリカ大陸の熱帯地域に生息するラビリンスフィッシュの仲間「クテノポマ」。私が魅了された野性味溢れるその姿と生態を、飼育下での観察と文献等から読み解き、紹介していきたい。