クテノポマ ニグロパンノースム(Ctenopoma nigropannosum)

【学名】Ctenopoma nigropannosum
   一般名:Twospot climbing perch

【命名者】Reichenow(1875)

【体長】170mm(TL)155mm(SL)

【形態的特徴】C.pellegriniやC.multispineと同じく体高が低く細長い体型をしている。吻やC.pellegriniと比較すると、鋭く角張った印象。体色は茶色っぽいグレー、または全体的にグレーを示す。体側面には、最多でも9本までの不規則な縦縞模様が尾柄部寄りに見られる。これらの縞模様は未成魚では典型的に見られる特徴となっている。鰓蓋膜の縁は黒色を示す。胸鰭・腹鰭は透明、背鰭・臀鰭・尾鰭は黒く着色する。未成魚では尾柄部にC.pellegriniの未成魚と類似した黒斑を持つ為、両者は成長段階によっては混同され易い。

【生息地】主な生息地はコンゴ川流域。ガボンのOgooue川からも報告されている。

【寿命】不明

【好適環境】水温:24~27℃
                    pH:不明
                    硬度:不明

【飼育雑感】我が家にC.nigropannosumがやってきたのは平成30年4月のことだった。それまではネット上で2006年頃輸入された記録を確認していたのみであった為、私にとっては正に幻のクテノポマだった。
   文献等では、その他のクテノポマと同様に飼育は容易と聞いていたが、いざ飼ってみると、本当にその通りであった。ワイルド個体であり、輸入から恐らく1ヶ月経たない内に我が家にやってきたにも関わらず、人工飼料は迎えた即日に食べ、その後も飼育に関して苦労させられることがない。
   他のクテノポマ属と比較すると、遊泳性が高く、じっとしていることは少ない。敏捷性も高く、餌捕りは非常に上手い。体型の似たC.pellegriniと威嚇し合う場面を時折見かけるが、他のクテノポマに対しては干渉しない。

【シノニム】
C.gabonense(Albert Günther,1896)
C.ashbysmithi(Banister & Bailey,1979)

【その他】
   種小名“nigropannosum”の“nigro”は「黒い」、“pannosum”は「毛氈(もうせん)状」、「ボロ」という意味であり、黒い鰭を有し、躯幹部から尾部の細かな黒っぽい縦縞模様を毛氈 = 毛を敷き詰めた様な物に見立てたものと思われる。
   また、一般名の“Twospot climbing perch”は鰓膜(一部が外部から視認可能)が黒っぽく見えることと、幼魚期のみ認められるという尾柄部の“dark bar”の2点を“Twospot”と表現したものか。または、幼魚期の“dark bar”が尾柄部の側線を境に上下に二分されるように見えることに由来するのかもしれない。

・シノニムであるC.gabonenseは「ガボンのクテノポマ」という意味。生物の種小名に地名を用いる場合、国名や、より広域の地名には“~icus”を用い、その他の地名には“~ensis”または“~iensis”が用いられるという規則がある。そして、属名の性と種小名の性を合わせる必要性があることから、語尾に変化が見られる。だが、C.gabonenseの場合、「ガボン」という国名を用いているにも関わらず、上述の命名規則に則っていない。それは、この種が発見された当時(1896年)、この地はフランスの植民地下に置かれており、”Gabon“はまだ正式な国名ではなく、一地域名に過ぎなかったからだろう。

・命名者のAnton Reichenowはドイツの鳥類学者であった。この人物は、1872~1873年にかけて、鳥類の収集の為に西アフリカに訪れていた。鳥類の研究の為に活動していたこの人物が、何故ニグロパンノースムを命名することになったのかは不明。


【参考】
1.J.-P Gosse 1986.Anabantidae.CHECK-LIST OF THE FRESHWATER-FISHES OF AFRICA,ISNB MRAC ORSTOM Paris,P 410-411
2.Melanie L. J. Stiassny, Guy G. Teugels, Carl D. Hopkins 2007.THE FRESH AND BRACKISH WATER FISHES OF LOWER GUINEA,WEST-CENTRAL AFRICA,Institut de recherche pour le développement,P255-257
3. George Albert Boulenger.1909. Catalogue of the fresh-water fishes of Africa in the British Museum,British Museum (Natural History). Dept. of Zoology.P56-57
4.Steven Mark Norris.1982.Superspecific relationship within the genus Ctenopoma(perciformes,Anabantoidei)a morphometric analysis and preliminary phylogeny.P25-32,94
5. Fish Base 「Ctenopoma nigropannosum」
6.Wikipedia「Anton Reichenow」


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クテノポマ専科

~更新情報~ 2022年1月31日「Ctenopoma動画保管庫」更新 アフリカ大陸の熱帯地域に生息するラビリンスフィッシュの仲間「クテノポマ」。私が魅了された野性味溢れるその姿と生態を、飼育下での観察と文献等から読み解き、紹介していきたい。